MUSUPERUHEIMU

MUSUPERUHEIMU

第62話

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―――東地区―――

辺りは破壊されたギャランゾの残骸が山となっていて

・・・ガシャ!

その上を黒服のヒュ―マーやレイマーが歩き回っていた

 「・・・ブッ壊れちまったんじゃないスかぁ?」

その中いた若い男の一人が小馬鹿にしたように呟く

 「あの旦那がそう簡単にやられる訳ないんだ
  馬鹿言ってないで真面目に探せ!」

残骸を持ち上げて退けていた男が愚痴を言っている若い男を怒鳴った

 「へーへー解かりましたよ・・・チッ・・何が旦那だよ
  たかがアンドロイド一体くらいほっときゃいいのによぉ
  暗殺用アンドロイドだかなんだか知らねぇが
  テクも使えないような鉄クズになにビビッてんだか」

その口ぶりからして新参者だと解かる男はブツブツと文句をたれる

 「アンドロイド如きが幅利かせているのならオレが組織で
  のし上がる事も簡単って事だよな・・・へへへ」

・・・コンッ・・・!

自分の妄想に酔いながら爪先で足元の残骸を蹴ったその瞬間

・・・ガシャァ!

 「へ?」

突然、残骸の中から飛び出してきた金属の腕が

・・・ガキィ!!

 「ぐぇッ!?」

若い男の首を鷲掴みにする

・・・ガシャァン!!

残骸が吹き飛び腕の持ち主が全身を現した

 『…オオオォォォォ…』

・・・コキ・・・ゴキ・・・ボキ・・・

 「ガッ!?・・・ぁ・・・ぁ・・・ぁぁ!?」

紫色のヒュ―キャストは唸り声をあげながら男の喉を握り潰す勢いで締め上げた
喉が破壊される嫌な音と共に声にならない悲鳴が男の口から漏れる

 「だ・・旦那ッ!?キリークの旦那!落ち着いてください俺らですよ!?」

異常に気付いた周りの男達が慌てて駆け寄ってキリークを止めようとするが
喉を掴まれた男は既に白目を剥き真っ赤な泡を吹いていた

・・・ヴンッ・・・!!

制止の声に反応したのかは定かではないが
キリークは片手で掴みあげていた男を放り投げた

・・・ガシャァァン・・・・!!

 「・・・ゴボッ・・・!」

残骸に叩き付けられた男は酷い有様だったがまだ息はあるようだった

 『…あの黒いアンドロイドは何処へ行った?』

殺気を孕んだ声でキリークが言う

 「へ?・・お・・恐らく港の方に飛んでいったようですが
  だ、旦那?本当に大丈夫ですかい?」

 『…南東地区か…』

・・・ガシャ・・・

キリークは南の方を向きギャランゾの残骸を踏みしめる

 「それなんですが旦那、港に居る筈のアネさんと連絡がつかないんです」

 『スゥと?』

南を向いていたキリークがその言葉に反応する

 「それとあの大剣の爺さんと軍服のニューマンを追わせていた
  ウチのモンも途中で連絡がつかなくなって・・・」

 『ドノフか…どの辺りで連絡が取れなくなった?』

 「最後の連絡は東地区制御塔に向かうとの事でした」

 『場所が解かっているのならば向かえばいいだろう』

 「それが…」

キリークに説明していた男は南の方を指差す

 「向こうの景色が陽炎にように歪んでるのが解かりますかい?
  あの辺りに行くと辺りが見えなくなり真っ直ぐ進んでいても
  何故か関係ない場所に出てしまうんですよ
  距離もデタラメで10メートル程歩いたつもりでも
  気付いたら数百メートル離れた場所に出てしまったりするんです」

 『戯言を…』

その説明を不信に思ったのかキリークが睨みつけてくる

 「いっ・・いや!疑うのはもっともなんですが本当なんですぜ!」

 『…ふん…』

あまりにも必死に答える男の態度を見てキリークは怒気を収める

 『俺が一人で行く…貴様等は連絡を取れるまで交信を続けろ』

 「はっはい」

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 『チェシャ?チェシャ~?聞こえる~?』

モニター越しに少女――アリス社長の声が聞こえてくる

 「なんでしょうか社長?」

作業をしながらチェルシーが応える

 『あっ良かった其処はまだ連絡できるみたいね
  あのねハンプティダンプティとの連絡が出来なくなったの
  どうやらその基地の一部地域だけどの通信手段も
  通じなくなったみたい』

 「更なるアークズの通信妨害でしょうか?」

 『んー…それにしてはちょっと様子がオカシイ気もするけど
  とりあえず其処とも連絡できなくなったら寂しいから急いで帰ってきてね♪』

 「社長を慰める事は仕事ではないのでお断りします」

 『チェシャったらイケズぅ~』

 「あのさー社長さんの事は別として急いではくんないかな?」

後ろで聞いていたアタシはちょっとグチってみた

 「すみませんミス・オカユ、データのダウンロードは直ぐに終わりますので」

 『なによ~上司より護衛の人と仲良くする気~?』

 「ミス・オカユには御世話になってますが社長には何も恩義は無いので」

 『給料を払っているのはアタシだぞー』

 「ですが私は給料以上の苦労しています
  怨みとは言いませんが感謝の気持ちなんてとてもとても」

 「…あのね会話の内容がリフレインしてるんだけど?」

苦笑しながらふとゾークの方を見ると彼は腕の端末を見ていた

 「どうしたのミスター?」

 「…連れからメールが届いていたのだが返信しても反応が無い」

 「地下だからじゃ?」

 「つい先程までは確かに連絡が取れていた」

 「…もしかして社長が言っていた通信不能地域へ?」

 「ありえるな…」

 「ねぇ社長さん?」

アタシは少し大きめの声でモニターの少女に声をかける

 『なーに?』

 「通信できない地域ってどの辺り?」

 『えーとね基地の南東地区にあたる軍港の辺り一帯ね』

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